epi.39

39.人類の存続のため…
本講は同作の核心部分に関するネタバレを含みますので,必ず同作の本編を完結させた方のみごらんください.
安全のため十分な空行を入れますので,自己責任においてスクロールしてください.
ネタバレ回避の空行
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39.1.木星圏での存続
第38話で真実が明らかになりました.

第38話補講でも述べましたが,木星トロヤ群が何らかの要因によって軌道を乱されて太陽系の深部へと落ち込んだことが人類に大きな決断を迫りました.
同作番外編を集めた「きみを死なせないための物語/第9巻」に登場しますが,そのとき人類が持っていた選択肢はa,b,c,dの少なくとも4つあったようです.
番外編には「c計画」と「d計画」についてのみが収録されていますが,その一つが木星圏への移住,つまりソウイチロウ率いる「d計画」でした.

海王星クラスの自由浮遊惑星が太陽系内に侵入したと設定したシミュレーションを行った結果です.
この惑星が木星トロヤ群に接近した結果,無数の小惑星が木星の公転軌道の内側に落ち込みます.
しかもそれら小惑星群は地球や火星の公転軌道を何度も横切り,その都度,惑星に衝突し,その様は約40億年前の後期重爆撃期の再来の様相を呈しています.
たとえ最初の一撃を耐えたとしても,繰り返し繰り返し,ほぼ半永久的に小惑星群の来襲を受ける地球や火星は完全に壊滅したことでしょう.まさに全てを消し去り,「種の保存」という甘っちょろいものではなく全てが原初の状態に戻る.
小惑星の大きさや衝突の相対速度と方向によっては,表面の破壊だけでは済まない破壊をもたらすこともあり得ます.

さて,木星の衛星に繋留されてテザード・コロニーとなったコクーン群で人類という種を存続させるためには,何よりもエネルギーが必要です.
木星は地球よりも約5倍離れているため太陽光は地球周辺の25分の1になっているので,太陽光を基盤エネルギーとして設定することはできません.
そこで水素を基盤とするエネルギー循環が現実的となります.
木星の大気から水素を採取するといっても,効率良く採取するために木星に近付きすぎると大気抵抗による減速によってあっという間に資源採取船は木星に墜落してしまいます.
そこで大気密度が余り大きくない木星の大気上層を何度も何度も通過させることで少しずつ水素を採取する必要があります.
そして水素を満載した資源採取船は年に4回,コクーンを繋留している木星の衛星に水素を陸揚げします.
コクーンはその水素を搬入するために衛星に降下する必要があります.
人工重力発生装置が存在しない以上,この降下によるコクーン内重力の低下はごまかせませんから,これを「地球降下」というイベントとすることで隠蔽していたということはとても巧妙です.